ドル円が急激に円安へ進んだとき、市場参加者が最も警戒する材料の一つが政府・日銀による為替介入です。
2024年4月29日にはドル円が一時160.245円まで上昇した後、154.40円まで急落。1日の高値から安値まで約5.85円という非常に大きな値動きが発生しました。後に財務省は、この日に5兆9,185億円のドル売り・円買い介入を実施したことを正式に公表しています。Reuters
さらに2024年7月11日には、米CPI発表直後にドル円が161円台から157円台へ急落。その後、財務省の公表によって7月11日と12日の2日連続で円買い介入が行われていたことが判明しました。財務省
そして2026年には介入規模がさらに拡大しています。
この記事では、2024年から2026年までの為替介入について、「いつ」「いくら介入し」「ドル円がどの程度動いたのか」を時系列で振り返ります。
目次
為替介入とは?
為替介入とは、為替相場の急激な変動を抑える目的などで通貨当局が外国為替市場で通貨を売買することです。
日本の場合、介入の実施を決定するのは財務大臣で、実務は日本銀行が財務大臣の代理人として行います。
今回取り上げる円安局面では、基本的に
米ドルを売る → 日本円を買う
「ドル売り・円買い介入」が実施されています。
財務省も、為替相場がファンダメンタルズから乖離したり、短期間に大きく変動したりすることは好ましくなく、相場安定を目的として介入を行う場合があると説明しています。財務省
なお、1985年のプラザ合意と近年の円買い介入の違いや、現在はなぜ主要国による協調介入が難しいのかについては「プラザ合意と協調介入」の記事で詳しく解説しています。
2024年4月29日|160円突破後に最初の大規模介入
2024年の為替介入で特に印象的だったのが4月29日です。
ドル円は一時、
1ドル=160.245円
まで上昇しました。
しかし、その後相場は急反転。
一時154.40円までドル安・円高が進みました。
高値から安値まで計算すると、
160.245円 − 154.40円 = 約5.85円
です。
わずか1日の中で約6円近い値幅が発生したことになります。Reuters
財務省が後日公表した介入額は、
5兆9,185億円
でした。財務省
2024年4月29日
介入額:5兆9,185億円
売買:米ドル売り・日本円買い
ドル円:160.245円 → 154.40円
高値・安値差:約5.85円
2024年5月1日|わずか2日後に再び円買い介入
4月29日の介入だけでは終わりませんでした。
財務省は5月1日にも3兆8,700億円のドル売り・円買い介入を実施しています。
4月29日と5月1日の合計は、
9兆7,885億円
に達しました。財務省
つまり当局は、一度の介入で終わらせるのではなく、短期間に複数回介入することで市場をけん制したことになります。
この点は、今後為替介入を警戒するときにも重要です。
「一度介入が入ったから、もう終わり」とは限りません。
2024年7月11日|米CPI発表直後にドル円が急落

そして2024年の中でも特に興味深いのが7月11日です。
この日は米国の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、米国の利下げ観測が強まりました。
CPIなどの重要経済指標が発表される時間帯は、通常より値動きが大きくなりやすいため、海外FXの取引時間とあわせて確認しておくことが重要です。
ドル円は161円台から157円台へ急落します。
当初、市場では、
「CPIによるドル売りなのか?」
「日本政府が為替介入したのか?」
という両方の見方がありました。
その後、財務省が正式な日次データを公表。
7月11日に、
3兆1,678億円
のドル売り・円買い介入を実施していたことが確認されました。
さらに翌7月12日にも、
2兆3,670億円
の介入を実施。
2日間の合計は、
5兆5,348億円
でした。財務省
Reutersも当時、CPIが予想を下回ったことで米利下げ期待が強まるなか円が急伸し、介入観測が強まったと報じています。Reuters
ここは重要
7月11日のドル円下落をすべて為替介入の効果と考えることはできません。
この日は、
米CPI下振れ → 米利下げ観測 → ドル売り
というファンダメンタルズ要因がすでに存在していました。
そこへ円買い介入が重なったため、値動きがさらに大きくなったと考えるのが適切です。
2024年の為替介入総額は15兆円超
2024年に確認された4回を合計すると、
| 実施日 | 介入額 |
|---|---|
| 4月29日 | 5兆9,185億円 |
| 5月1日 | 3兆8,700億円 |
| 7月11日 | 3兆1,678億円 |
| 7月12日 | 2兆3,670億円 |
| 合計 | 15兆3,233億円 |
財務省公表値を合算すると15兆3,233億円です。財務省
2026年4月30日|再び160円台で大規模介入

そして2026年。
再び急激な円安が進み、政府・日銀による大規模な円買い介入が実施されました。
財務省が正式に公表した2026年4~6月期の介入は3回です。
| 実施日 | 介入額 |
|---|---|
| 4月30日 | 6兆2,787億円 |
| 5月4日 | 7,802億円 |
| 5月6日 | 4兆6,759億円 |
| 合計 | 11兆7,349億円 |
すべて米ドル売り・日本円買いです。財務省
4月30日の介入額だけでも6兆2,787億円。
2024年4月29日の5兆9,185億円を上回る規模でした。
2024年と2026年に共通する特徴
ここまでを比較すると興味深い共通点が見えてきます。
2024年4月29日はドル円が160.245円まで上昇した局面で大規模な値動きが発生しました。Reuters
2026年4月末も160円台まで円安が進んだ局面で大規模介入が実施されています。
ただし、
「160円になったら必ず介入する」
という意味ではありません。
当局は特定の為替レートを介入ラインとして公式に設定しているわけではなく、値動きの速度や一方向への投機的な動きなども重要と考えられます。
したがってトレーダーが見るべきなのは、単純な「160円」という数字だけではありません。
2026年7~8月にはさらに15兆円規模の介入
さらに2026年夏、介入規模は一段と拡大しました。
財務省によると、
2026年7月30日~8月26日の介入総額は15兆3,993億円
です。財務省
これは4~5月の11兆7,349億円をさらに上回ります。
報道では、7月30日にドル円が164円に迫った後、一時155円台まで円高が進んだ局面も伝えられています。FNN
ただし、ここは注意が必要です。
2026年9月29日現在、財務省が正式公表している7~8月分は期間中の総額までです。
具体的に、
「7月30日にいくら」
「7月31日にいくら」
という日別の正式な介入額はまだ公表されていません。
財務省は2026年11月2~9日に7~9月期の日次ベースの介入実績を公表予定としています。財務省
2024年と2026年の為替介入を比較

| 時期 | 介入規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2024/4/29 | 5兆9,185億円 | 160.245円から154.40円まで急落 |
| 2024/5/1 | 3兆8,700億円 | 2回目の介入 |
| 2024/7/11 | 3兆1,678億円 | 米CPI発表直後 |
| 2024/7/12 | 2兆3,670億円 | 2日連続介入 |
| 2026/4/30 | 6兆2,787億円 | 160円台で大規模介入 |
| 2026/5/4 | 7,802億円 | 追加介入 |
| 2026/5/6 | 4兆6,759億円 | 再び大規模介入 |
| 2026/7/30~8/26 | 15兆3,993億円 | 現時点では期間総額のみ公表 |
介入額は財務省公表資料によります。財務省
過去の介入から分かる3つのポイント
① 「○○円」が介入ラインとは限らない
160円という水準は2024年・2026年とも重要な局面になりました。
しかし、介入の判断は為替レートだけではありません。
短時間で数円動くような一方向への急激な相場変動にも注意する必要があります。
② 介入は1回で終わるとは限らない
2024年は4月29日の後に5月1日、7月11日の後に7月12日と、短期間に追加介入が行われました。財務省
2026年も4月30日、5月4日、5月6日と複数回実施されています。財務省
つまり、一度大きな円高が発生した後も警戒を解くのは危険です。
③ 経済指標と介入が重なると値動きがさらに複雑になる
代表例が2024年7月11日です。
CPI下振れによるドル売りと、日本当局の円買い介入が同じタイミングで発生しました。
FXでは、
「大きく下がった=全部介入」
と単純に判断しないことが重要です。
海外FXで為替介入時に注意したいこと
為替介入局面では、通常時とは比較にならないほど短時間で価格が動く可能性があります。
特に海外FXで高いレバレッジを利用している場合、
には十分な注意が必要です。
たとえばドル円1ロット(10万通貨)なら、単純計算で1円動くだけでも損益は約10万円変化します。
5円なら約50万円です。
レバレッジが高いこと自体が損失を生むわけではありませんが、ポジション量を大きくしすぎると、介入時の数円単位の急変に耐えられなくなる可能性があります。
為替介入が警戒される局面で確認したいこと
今後ドル円が急激に円安へ進んだ場合は、
為替水準だけを見るのではなく、円安のスピード・財務相など政府関係者の発言・米国の重要経済指標・日米金利差・流動性の低い時間帯
を総合的に確認することが重要です。
特に「過度な変動」「投機的」「あらゆる手段を排除しない」といった当局者発言が増えている局面では、市場の介入警戒感も高まりやすくなります。
雇用統計後のFRBの金融政策を占う次の重要材料が米CPIです。2022年の「CPIショック」と現在の相場環境の違いについては「米CPIでドル円は再び急変する?」で詳しく解説しています。
FAQ
Q1. 為替介入は誰が決めるのですか?
日本では財務大臣が為替介入を決定し、日本銀行が代理人として実務を行います。
Q2. 2024年4月29日の介入額はいくらでしたか?
5兆9,185億円です。財務省が正式に公表しています。財務省
Q3. 2024年7月11日は本当に為替介入だったのですか?
はい。後に財務省が、7月11日に3兆1,678億円のドル売り・円買い介入を実施したと正式に公表しました。翌12日にも2兆3,670億円の介入を行っています。財務省
Q4. ドル円が160円になれば必ず介入されますか?
必ず介入されるとは限りません。過去には160円前後で大規模介入が行われていますが、特定の水準が公式な介入ラインとして公表されているわけではありません。
Q5. 2026年の為替介入はいくらですか?
4月30日~5月6日の3回で11兆7,349億円。さらに7月30日~8月26日の期間には15兆3,993億円の介入が公表されています。財務省
Q6. 為替介入時に海外FXで取引しても大丈夫ですか?
取引自体は可能ですが、通常時より大きな値動きやスプレッド拡大、スリッページが発生する可能性があります。特に高レバレッジで大きなポジションを保有する場合は証拠金管理が重要です。
まとめ|為替介入は「水準」だけでなく「値動きの速さ」に注意
2024年から2026年の為替介入を振り返ると、ドル円が160円台へ進んだ局面で複数回の大規模な円買い介入が実施されています。
2024年4月29日は160.245円から154.40円まで、1日の高値・安値で約5.85円の変動が発生しました。Reuters
2024年7月には米CPI発表と介入が重なり、2026年には介入規模そのものがさらに拡大しました。
しかし、過去に160円付近で介入したからといって、
「160円=必ず介入」
と考えるのは危険です。
重要なのは為替水準だけではなく、円安の進行速度、投機的な値動き、政府関係者の発言、米経済指標などを総合的に見ることです。
また、為替介入時は数分~数時間で数円動くこともあります。
海外FXで取引する場合は、普段以上にポジションサイズと証拠金維持率を意識し、急変動に耐えられる資金管理を心掛けましょう。

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